Portege SS3330 で Debian を使う


前口上

以前に使用していた Thinkpad560 の液晶が壊れてしまったので,修理に出したところ13万円もかかると言われてしまった. そんなにするのなら,と新しい機種を買うことにして,小さくていいなあと思っていた SS3330 にした. SS3330 は今年の6月に発表の製品だから既に型落ちしているため,かなり安くなっている点も良い.

11月31日

荷物が届いた.すかさず起動して,リカバリ・フロッピーを作成. 最初は,Windows 領域を500MB程度残しておいて,残りを Linux にしようと思っていたのだが, 思ったように Windows の設定を変更することができないことが分かったので, 完全に消去することにする(ついでに,Designed for Windows のシールも剥がした). まあ,リカバリ・フロッピーがあればいつでも元に戻せる,ということで.

12月1日

インストール開始.

起動時の TOSHIBA のロゴが出る直前に ESC キーを叩き,更に指示にしたがって F1 キーを押すことによって,BIOS 設定画面に入る. ここで,PCMCIA card controler を PCIC Compatible に変更しておく. これをしておかないと,ネットワークカードの初期化に問題が生じるらしい(未確認).

とりあえず,インストーラを起動しなければならない. potato 用の最新のイメージを手近なミラーから取ってきて rescue floppy を作成した.

sudo /etc/init.d/volmgt stop
fdformat -v -U -d
dd if=resc1440.bin of=/dev/fd0 bs=512 conv=sync
eject
fdformat -v -U -d
dd if=root1440.bin of=/dev/fd0 bs=512 conv=sync
eject
fdformat -v -U -d
dd if=drv14-1.bin of=/dev/fd0 bs=512 conv=sync
eject
# 以下同様にして作成

SS3000 に slink をインストールした記録などから, かなりてこずるだろうという事前の予想に反して,何もしなくても素直に立ち上がった. インストーラも進歩しているんですねぇ.

  1. Configure PCMCIA Support
    特別なオプションを指定する必要はない. PCMCIA を有効にする前からネットワークカードを挿入しておくと, 有効にした時にビープ音が鳴って認識したことが確認される. 一旦有効にした後に挿入すると,うまく認識してくれないようなので注意すること.
  2. Configure the Network
    ネットワークに常に接続しているわけではないので,2番目の質問には No と答える. 実行後,Alt + F2 キーで別のコンソールに移動し,
    ifconfig eth0 inet xxx.xxx.xxx.xxx netmask 255.255.255.0 up
    
    と,ネットワークを設定しておく.
  3. Install the Base System
    当初,NFS 経由でのインストールを試みたが,何度試しても base2_2.tgz を展開するところで,
    dmgr: Text file is busy.
    There was a problem extracting the Base System from /target/base2_2.tgz
    
    というエラーメッセージが表示されて失敗する. どうやら,cardmgr が参照しているファイルを上書きしようとして,失敗しているらしい. しかし,既に Windows パーティションはなく,CD-ROM もない. NFS 経由かフロッピー経由のどちらかしか方法はないのである. そこで,次の手順でインストールを行った.
    1. 一度,Configuration Device Driver Modules の段階までインストールを実行し, 最低限,NFS を使える状態にする.ここで,別のコンソールに移動し, NFS 経由で必要なファイルをローカルの別パーティションのディスクにコピーする.
    2. 再度インストーラを実行し,今度は PCMCIA を有効にせず, マウント済のディスクからインストールするように指示した.
    これで,ようやく基本システムがインストールできた. 原因が分かるまでに,6時間も費やしてしまった.ぶつぶつ….
    なお,この件に関しては,Debian Project の鵜飼さんが連絡をつけてくださったので, 正式版が出る時には直っていることでしょう.

後は,適当にインストーラの指示にしたがってインストールを行った. 何故かは分からないけど,キーボードの配置が ASCII 配列に戻ってしまったので, kbdconfig を実行して jp106 配列になるように再設定した.

dselect を実行するときに,apt-get がファイルを入手する場所を以下のように変更した.

ftp://dennou-k.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/library/Linux/debian unstable main,contrib,non-free
ftp://dennou-k.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/library/Linux/debian-jp unstable-jp main,contrib,non-free
ftp://dennou-k.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/library/Linux/debian-non-US unstable/non-US main,contrib,non-free

XFree86 の設定を行う.東芝が SS3300 用の XF86Config を公開しているので非常に便利である. Pointer の指定が /dev/mouse になっているため,これを /dev/psaux に書き換える必要があるが,それ以外は無修整で動作した(修正済の XF86Config).

12月2日

とりあえず,自分がいつも使っている環境の整備に取り掛かる. Wnn に対応した Emacs20 は,現在の potato には含まれていないが,これがないと全く仕事にならないので, とりあえず /usr/local/ の下にインストールしてしのぐ.

次に,Wnn6 のインストールを行う.

  1. ユーザー wnn とグループ wnn を作成.
    addgroup --gid 127 wnn
    adduser --system --uid 127 --gid 127 --home /usr/local/lib/wnn6 --no-create-home wnn
    
  2. バイナリパッケージをインストール.
    dpkg -i dpkey_1.22-1_i386.deb
    dpkg -i wnn6_2.2-3_i386.deb
    
  3. /usr/local/OMRONDp/dp/dpkeylist にライセンス鍵を書き込む.
  4. 起動用のスクリプト /etc/init.d/Wnn6 を用意.
  5. update-rc.d Wnn6 defaults 95 5

shutdown した時にきちんと電源が切断されないので, 次のような .config を使用して, kernel の再構築を行った.

ハードウェア内蔵の CMOS clock は,世界標準時(GMT)にしておく方が間違いがない. 日本標準時(JST)に設定しておくと,suspend から回復したときに OS の時計が狂ってしまった(これは,kernel configuration によって修正できるかも知れない). /etc/default/rcS をファイル中のコメントに従って修正し, hwclock コマンドで設定することによって解決された. debian-users ML に投稿されたこの記事が参考になるかも.

PC カードの活線挿抜がうまくいかない.cardctl insert をすると認識してくれるので,/etc/pcmcia.conf に,

PCIC_OPTS="poll_interval=100"
という指定を加えると正常に動作するようになった.

12月3日

PCMCIA の Card Controller の設定をデフォルトの Auto Select に戻してみた. Card-BUS でもきちんと使えているようだ.これで以前の設定は不要になった.

TeX および Postscript 周りの設定がまったく不完全である. xdvik-ja を実行すると,日本語部分が完全に抜け落ちて表示される. ということは,おそらく VFLib の設定が不完全なのだろう. うーん,この忙しいのに一体どうせえっちゅうんじゃ.

12月4日

東芝のノートパソコンの APM BIOS を操作するためのユーティリティを見つけたのでインストールした. なお,Debian パッケージはここにある(本家でパッケージ化されたので削除した). 本当は setuid root されていないと動かないプログラム[注]なのだが, パッケージのバイナリは setuid root していない(このプログラムの作者自身が,セキュリティホールの危険性を指摘していたので, とても setuid root する気にはなれなかった). その代わりに,以下のようなエントリを /etc/sudoers に追加して対処した.

User_Alias	ADMIN=user_foo
Cmnd_Alias	TOSHUTILS=/usr/bin/fan,/usr/bin/svpw,/usr/bin/tpasswd,/usr/bin/alarm,/usr/bin/hotkey,/usr/bin/wmtuxtime,/usr/bin/tuxtime-conf,/usr/bin/dispswitch
ADMIN	ALL = (ALL) ALL, NOPASSWD: TOSHUTILS

[注] 最近の toshutils は,特権の必要な部分がカーネルモジュールとして分離されているので,本体の setuid root は必要なくなっている.

12月11日

wmtuxtime と xppxpm をボタン上に並べて配置すると,かなり間抜けに見えるので, 適当なものを探していると,wmppxp というプログラムが見つかった.全く同じ名前の別のプログラムもあるのだが, 個人的には前者の方が好みのデザインだった. というわけで,Debian パッケージを作成してみた.

CapsLock キーは滅多に使わないので,これまでは xmodmap で調節していたのだが, 以下の指定を Keyboard セクションに加えることによって XF86Config でも設定できるらしい.

XkbOptions  "ctrl:nocaps"

12月12日

kernel-2.2.13 + pcmcia-3.1.4 の環境では,モデムカードが使用できなくなる場合がある問題が発覚. 詳細については,debian-users ML のこの記事から始まるスレッドを参照されたい. BIOS 設定で内蔵のシリアルを不使用に設定し, /etc/pcmcia/config.opt に以下の修正を加えることによって,なんとか使用できるようになった.

--- /etc/pcmcia/config.opts.ORIG	Thu Oct 14 03:47:00 1999
+++ /etc/pcmcia/config.opts	Thu Dec  9 15:52:23 1999
@@ -3,9 +3,10 @@
 #
 # System resources available for PCMCIA devices
 #
-include port 0x100-0x4ff, port 0x1000-0x17ff
+#include port 0x100-0x4ff, port 0x1000-0x17ff
+include port 0x100-0x4ff
 include memory 0xc0000-0xfffff
-include memory 0xa0000000-0xa0ffffff, memory 0x60000000-0x60ffffff
+#include memory 0xa0000000-0xa0ffffff, memory 0x60000000-0x60ffffff
 #
 # Extra port range for IBM Token Ring
 #
12月15日

懸案の TeX の設定について調査開始. 都合の良いことに,Debian では X-TT で利用するためのフリーの日本語 TrueType フォントがパッケージ化されているから,これを利用するように設定しようとしたのだが, これが全くうまく動かない.何故だろう…(原因).

12月16日

PCMCIA の設定に関してだが, ネットワークカードを挿入したまま起動すると, 以下のようにメモリーカードとして認識されてしまう問題があることを発見した. なお,起動完了後にネットワークカードを挿入すると正常に認識されるから, おそらくは ToPIC97 の初期化の問題なんだろうなあ….どないしよ.

Dec 16 15:55:04 foo cardmgr[124]: socket 1: Anonymous Memory
Dec 16 15:55:04 foo cardmgr[124]: executing: 'insmod /lib/modules/2.2.13/pcmcia/memory_cs.o'
Dec 16 15:55:04 foo kernel: memory_cs: mem0: anonymous: unknown size
Dec 16 15:55:04 foo cardmgr[124]: executing: './memory start mem0'
Dec 16 15:55:44 foo cardmgr[124]: shutting down socket 1
Dec 16 15:55:44 foo cardmgr[124]: executing: './memory stop mem0'
Dec 16 15:55:44 foo cardmgr[124]: executing: 'rmmod memory_cs'

w3m のキー配置がデフォルトのままになっていて, lynx 類似のキー配置に慣れた私には使いづらいのでパッケージを作り直した (その後,この問題は解決しました).

12月18日

/etc/inittab を以下のように編集して,仮想コンソールの数を2つに減らした.

--- inittab.orig	Sat Dec 18 19:12:09 1999
+++ inittab	Sat Dec 18 19:12:13 1999
@@ -49,10 +49,10 @@
 #  :::
 1:2345:respawn:/sbin/getty 38400 tty1
 2:23:respawn:/sbin/getty 38400 tty2
-3:23:respawn:/sbin/getty 38400 tty3
-4:23:respawn:/sbin/getty 38400 tty4
-5:23:respawn:/sbin/getty 38400 tty5
-6:23:respawn:/sbin/getty 38400 tty6
+#3:23:respawn:/sbin/getty 38400 tty3
+#4:23:respawn:/sbin/getty 38400 tty4
+#5:23:respawn:/sbin/getty 38400 tty5
+#6:23:respawn:/sbin/getty 38400 tty6

 # Example how to put a getty on a serial line (for a terminal)
 #

更に,inetd / portmap を起動しないように変更した.

rm -f /etc/rc?.d/*inetd
rm -f /etc/rc?.d/*portmap

しかし,このような変更では netbase パッケージを更新する際に上書きされてしまうと思われる. 正確にはどのようにすれば良いのだろうか.

12月20日

とりあえず,以下の手順によって xdvik-ja と dvi2ps は動作するようになった.

  1. vflib2 から freetype のフォントエンジンを利用できるようにパッケージを作り直す.
  2. xtt-fonts の依存関係を修正し,xfs-xtt が入っていなくてもインストールできるように, パッケージを作り直す.
  3. /etc/vfontcap を適切に編集する.
  4. ktest -f min 及び ktest -f goth を実行して,設定を確認する.

本筋とは関係ないけれど,xdvik-ja のキーの配置がデフォルトのままになっていて vi 類似のキー配置に慣れている私には使い難いので,これも作り直した(修正). 作り直したパッケージはいつも通りここにある. BTS に要望として提出済みなので,vflib2 と xtt-fonts のパッケージの作り直しは必要なくなるかも知れない(vflib2 はバージョンアップと同時に要望が反映されたので,パッケージの作り直しは不要になった). 残っている問題点は…,

しかし,いつまでも現実逃避しているわけにも行かないので,このぐらいでしばらく様子をみよう.

12月21日

kterm でカラー表示が出来ない. ちょっと調査してみたのだが,適当な解決策が見当たらないし,調査の時間も惜しいので, さっさと krxvt に乗り換えてみた.すると,カラー表示は正常に行われるものの, BackSpace / Delete キーが効かないという現象が生じた. が,この不具合は ~/.inputrc 中の以下の設定をコメントアウトすると生じなくなった.

Del: delete-char

発表に使うために,xdvik-ja を少し改造した.

apt-get source xdvik-ja
cd xdvik-ja-22.15-j1.03/
patch -p1 -E <xdvik-ja-no-button-patch
./debian/rules build
sudo install -o root -g root -m 755 debian/xdvi-ja /usr/local/bin/dvipoint
sudo install -s -o root -g root -m 755 texk/xdvik/xdvi.bin /usr/local/bin/dvipoint.bin

更に,~/.fvwm2rc~/.Xresources を設定すると,ちょっとした発表には十分に使えるツールになる.

昔使っていた RedHat-5.2 に DynaFont が付属していたことを思い出す. /usr/local/ 以下に適当にインストールして /etc/vfontcap を編集すると,ばっちり使えるようになった.やっぱり格段に綺麗である.

1ヶ月弱使ってみて,CPU性能,大きさ,重さ,バッテリ持続時間については大体満足している. 大容量バッテリを使えば2時間強は保ちそうだし,薄型ノートでこれ以上を求める気はあまりない. 不満な点としては,工作精度と強度がある. 標準バッテリに換えて大容量バッテリを装着すると,バッテリの接合部が少しがたつく. きちんと完全に蓋を閉じても,アームレストの部分と蓋の縁がピッタリと一致しない. アームレストとキーボードが微妙に歪んでいるような気がする. 持ち運んで使う以上,強度に不安を感じるのはちょっと困りものなのだが.

12月24日

Emacs-20.5 をインストールした.XIM 経由での漢字入力を行わないようにするために X_I18N_INHIBITED マクロを定義してコンパイルした. この指定を省くと,kinput2 が終了した場合に同時に Emacs が終了してしまう場合がある. それにしても,Debian パッケージが欲しい…. [その後,パッケージ化に成功した]

サウンド関係の設定について調査. これまで全くと言っていいほど,情報収集してこなかった分野なので全く勘が働かずに苦労する. ALSA というドライバが評判が良いようなので, これをインストールしようとしたが,SS3330 に使用されている ESS Maestro2 (ESS1978S) は,現時点ではサポートされていないらしい(リスト). そういうわけで混乱してきてしまったので,今日はとりあえず諦めた.

まだ不完全なものらしいが,ALSA 用のドライバがここで公開されている. kernel に付属しているドライバでも再生できないらしいが,このページで公開されているドライバを使えば大丈夫という記述も見掛けた(未確認). 誰か網羅的なページを作ってくれないかなぁ…. [その後,ALSA導入に成功した]

12月28日

ppxpsel というプログラムを見つける.PPxP の設定ファイルを GUI で選択するためのプログラムらしい. ちょっと面白そう.

jlatex209 が正常に動作しないという問題を発見. これは,latex209-base パッケージを導入してから /usr/sbin/jtexconfig init を再実行すると解決した(参考記事,インストール済パッケージのリスト).

リンクを張って Perl のパスを調節しておく.

cd /usr/local/bin && sudo ln -s ../../bin/perl

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